誤った解釈は現場を混乱させる!【廃棄物処理法における専ら物の解釈】
廃棄物処理法では、専ら再生利用の目的となる廃棄物(専ら物)は許可不要ということをご存じでしょうか。
そんな専ら物に関して、環境省からお怒りの文書が掲載されていましたので、ご紹介します。
日報ビジネス株式会社の週刊循環経済新聞2月27日No.1622第2面に掲載された「専ら4品目同等品も許可不要」と題する記事において、標題の通知(令和5年2月3日付け環循適発第2302031号・環循規発第2302031号)について事実関係の誤解が見受けられ、これにより廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)の誤った情報を広め、廃棄物処理業者や自治体等に混乱を生じさせるおそれがあると考えられることから、同社に対して当該記事を訂正いただくよう申し入れを行いましたのでお知らせいたします。
2024年2月28日 環境省 「専ら再生利用の目的となる廃棄物の取扱いについて(通知)」に関する報道について
環境省の発出した通知を「都合の良い解釈」をして、記事を書いたためこのような事態になったと考えられます。
この記事を書くに至った通知が以下の通知のようです。
さてさて、この通知から何を書いたら怒られるんだと思って内容を読み進めると「拡大解釈」もはなはだしいことが書いてありました。
環境省の文書には、記事の3点について、「つっこみ」がはいっていました。
まず、1点目は、
1.「環境省は、専(もっぱ)ら4品目と同じように、価値が高く再生利用が確実な使用済PETボトルや資源プラ、金属くずなども産廃マニフェストが不要で回収のための収集運搬やリサイクルのための廃棄物処理業の許可も必要ないことを2月3日の通知で明らかにした。」という記述について
標題の通知において、PETボトルや資源プラ等の具体的な品目について、専ら再生利用の目的となる廃棄物と同様に廃棄物処理業の許可等が必要ないという記載はありません。
これは、本当にヤバいです。
ちゃんと文書を読んだんでしょうか。
該当の通知において、プラスチックの話など1ミリも出ていなので、論外の文書です。
「専ら再生利用の目的となる一廃又は産廃については」との記載がある部分を、自分の解釈で述べたにすぎません。
プラスチックは、高分子材料であり、ペットボトル(ポリエチレンテレフタレート)やポリ袋(ポリエチレン)、塩ビ管(塩化ビニール)、発泡スチロール(ポリスチレン)など様々な種類が存在します。
単一素材で回収しないと元のプラスチックにリサイクルできない性質から、現在はRPFなどの固形燃料の材料となり、サーマルリサイクルされています。
よって、プラスチックは、「専ら再生利用の目的となる」とは言い難い状況であることがわかります。
専ら4品目にプラスチックが入ってほしいという願いはわかりますが、書いてもいないことを記載するのは現場を混乱させ、許可制度の根幹をねじまげることとなってしまいます。
次の点は、
2.「専(もっぱ)ら物は、有価物であり廃棄物ではないとの考え方から産廃マニフェストは使わない。回収時の収集運搬の許可も必要ない。」等という専ら再生利用の目的となる廃棄物は有価物であるために廃棄物処理業の許可やマニフェストが不要であるという趣旨の記述について
専ら再生利用の目的となる廃棄物は、有価物ではありません。廃棄物の処理を業として行う場合には許可が必要であり、専ら再生利用の目的となる廃棄物のみの処理を業として行う場合には、廃棄物の処理であっても例外的に許可が不要となります。
これも本当に何もわかっていないことが露呈しています。
「専ら物=有価物」という方程式は、法律のどこにも記載がありません。
「専ら物=許可不要」は、ちゃんと法律上、【第7条第1項ただし書き】や【第14条第1項ただし書き】により記載されています。
それが、「専ら物=許可不要=有価物」と解釈され、「専ら物=有価物」と変換されたと思われます。
専ら物は廃棄物!
これは、これからも変わらない事実ですので覚えておきましょう。
「専ら物が廃棄物なのに規制されていないというのは、なぜなの?」
という疑問があると思います。
これは、廃棄物処理法ができた当初の通知までさかのぼる必要があります。
当時、このような通知があります。
産業廃棄物の処理業者であっても、もっぱら再生利用の目的となる産業廃棄物、すなわち、古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維を専門に取り扱っている既存の回収業者等は許可の対象とならないものであること。
昭和46年10月16日環整43号 廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について
この通知から、
「これまで習慣的に回収されて再生(リサイクル)されているものに関しては、許可不要としてその活動の妨げにならないようにしよう。」
という意図が読み取れます。
よって、法律ができた当初の規制緩和措置にあたると考えられます。
専ら物に関しての通知は、これ以降発出されていません。
最後の指摘は、
3.「産廃業者は、一般廃棄物収集運搬業の許可なく、一般廃棄物の古紙や古繊維類を運搬できること等が明確になったといえる。」という記述について
標題の通知において、「専ら再生利用の目的となる廃棄物以外の廃棄物の処分等を主たる業として行っている者であっても(略)専ら再生利用の目的となる廃棄物の処分等については、廃棄物処理業の許可は要しない。ただし、専ら再生利用の目的となる廃棄物であっても、それが再生利用されないと認められる場合には当該許可が必要であることに留意されたい。」と記載しています。
この記述は、そのとおりにも思えますが、少し補足が必要だったようです。
以前の専ら物の通知には、「産業廃棄物の処理業者であって」と記載されていますので、一般廃棄物処理業者については触れていません。
今回の通知で、一般廃棄物について触れられた点については、一歩前進した点といえます。
この記事の記載に環境省が言いたかったことは、
「専らだからってなんでもかんでも許可不要ではないよ。」
ということだと思います。
専ら物として定義された4品目についても、いずれは再生利用されない可能性だってあるわけです。
「再生利用されないなら、廃棄物としてちゃんと許可を取得しないと、処理は認めないよ。」ということです。