虚偽のマニフェストが返送されたら

マニフェストの例

もし産業廃棄物の処理を委託した業者が行政処分を受けたら、排出事業者としてどう対応するべきなのでしょうか。

福岡県が産業廃棄物処分業者にこんな行政処分を行っていました。

F株式会社(産業廃棄物処分業者)は、処分を受託した産業廃棄物543.7立法メートル(以下「未処理廃棄物」という。)を少なくとも4年以上の長期間にわたり保管したまま処分を行っていません。このため、本日、同社に対し、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律137号。以下「法」という。)第19条の3の規定に基づき改善命令を発出しましたので、お知らせします。

令和6年3月29日 福岡県庁

未処理の理由がよくわかりませんが、施設がうまく機能しなかったのか、それとも処分するのがめんどくさかったのか・・・

4年以上も放置されているとは、なかなかなものです。

この会社が今回受けた行政処分である「改善命令」は次の条文です。(一部抜粋)

(改善命令)
法第19条の3 次の各号に掲げる場合において、当該各号に定める者は、当該一般廃棄物又は産業廃棄物の適正な処理の実施を確保するため、当該保管、収集、運搬又は処分を行つた者に対し、期限を定めて、当該廃棄物の保管、収集、運搬又は処分の方法の変更その他必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
 一般廃棄物処理基準が適用される者により、当該基準に適合しない一般廃棄物の収集、運搬又は処分が行われた場合 市町村長
 産業廃棄物処理基準又は産業廃棄物保管基準が適用される者により、当該基準に適合しない産業廃棄物の保管、収集、運搬又は処分が行われた場合 都道府県知事
 無害化処理認定業者により、一般廃棄物処理基準又は産業廃棄物処理基準に適合しない一般廃棄物又は産業廃棄物の当該認定に係る収集、運搬又は処分が行われた場合 環境大臣

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)

今回は、産業廃棄物処分業者が対象となっていますので「産業廃棄物処理基準」に違反するとして、福岡県(都道府県知事)から改善命令の発出が行われました。

4年も放置している事実をどうやって確認したのかわからないですが、処理するのを放置していたのは明らかだと思います。

この場合、排出事業者としてはどのような対応を行うべきなのでしょうか。

その答えは、「行政に報告する必要がある」です。

産廃の処理を他人に委託する際は、マニフェストを利用しますが、その中の条文にこんな記載があります。

(産業廃棄物管理票)

法第12条の3
 管理票交付者は、環境省令で定める期間内に、第三項から第五項まで若しくは第十二条の五第六項の規定による管理票の写しの送付を受けないとき、これらの規定に規定する事項が記載されていない管理票の写し若しくは虚偽の記載のある管理票の写しの送付を受けたとき、又は第十四条第十三項、第十四条の二第四項、第十四条の三の二第三項(第十四条の六において準用する場合を含む。)、第十四条の四第十三項若しくは第十四条の五第四項の規定による通知を受けたときは、速やかに当該委託に係る産業廃棄物の運搬又は処分の状況を把握するとともに、環境省令で定めるところにより、適切な措置を講じなければならない。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)

要するに、管理票交付者(排出事業者)は、以下の場合、適切な措置を講じなければなりません。

・マニフェスト交付の日から90日(特別管理産業廃棄物は60日、E票は180日)以内にその写しの送付を受けない場合
・法定事項が未記載のマニフェストの写しの送付を受けた場合
・虚偽の記載のあるマニフェストの写しの送付を受けた場合
・収集、運搬又は処分を適正に行うことが困難となるか又は困難となるおそれがある旨の通知を受けた場合

はて?適切な措置とはなんですか?

と思われるでしょうが、それは「措置内容等報告書」という報告書を作成することになっています。

(管理票交付者が講ずべき措置)

規則第8条の29 管理票交付者は、法第十二条の三第八項に規定するときは、生活環境の保全上の支障の除去又は発生の防止のために必要な措置を講ずるとともに、次の表の上欄の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる報告期限までに、様式第四号による報告書を都道府県知事に提出するものとする。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和46年厚生省令第35号)

4年も放置されていたということで、マニフェストの交付日から90日を超過することは明らかですし、仮にマニフェストが手元に戻っていた場合は、虚偽の記載のあるマニフェストということになります。

事業者が行政から出された改善命令を履行するかどうかはわかりません。

もし、改善命令が履行されず廃棄物が放置され生活環境に支障が生じるようであれば、さらに厳しい処分である措置命令に移行するかもしれません。

引き続き、どういう経緯をたどるのか注視していきます。

再度まとめますと、

排出事業者は、以下の場合、都道府県知事に「措置内容等報告書」を報告する必要があります。

・委託した産業廃棄物のマニフェストが手元に戻ってこない場合
・法律で定められたことが書いてないマニフェストが戻ってきた場合
・虚偽記載のあるマニフェストを受け取った場合
・処理が難しくなるおそれがある通知を受けた場合