廃棄物事案対応の難しさ 

公務員時代、不法投棄現場や不適正処理現場には何度も行ったことがありますが、行為者に片付けを指導するのは本当に骨の折れる仕事です。

山梨県の苦労がわかる事案がありました。

北杜市に運んだ大量の建築廃材を業者が違法に保管している問題で、県の対応について検証する調査委員会は、違反の期間が長期にわたり、より早期に改善命令を出す必要があったとして、対応は不当だったとする報告書をまとめました。

3月25日 NHK 山梨 NEWS WEB 大量の産廃違法保管問題 県の対応は「不当」調査委が報告書

事案としては、よくあるパターンで、業者が自社の空き地に処理予定の廃棄物(今回は木くず)を大量に持ち込んで、放置して県に片付けろと言われているものです。

南アルプス市の解体工事業者は、建築廃材の木くずを北杜市武川町に搬入し、法律の上限を大幅に超えて保管し続けているとして、去年11月に県から改善命令が出されました。

この場合、法律とは言わずもがな廃棄物処理法のことですが、廃棄物処理法上、自社の排出した廃棄物を自社の敷地に保管する場合には保管量の上限はありません。
(ただし、屋外で容器などを用いない保管の場合、保管高さなどの制限はあります。)

保管量が定められているのは、積替えのための保管か産業廃棄物収集運搬業者(積替保管業者)と産業廃棄物処分業者です。

おそらく解体場所から北杜市の自社敷地に運んできて、処分先に持っていく予定で保管していたものと思われます。

県の対応に違法性はないものの、2021年10月以降、保管量の上限を大幅に超える状態が2年以上の長期にわたって継続していて、より早期に改善命令を出す必要があったと指摘しています。

推測になりますが、2021年には立派な違法状態が成立していたようですが、事業者が片付ける意思を示していたので、行政指導で片付けを指導していたものと思われます。

それにもなかなか応じないため、法律で定められた強制的な指導(改善命令)を行ったのだと思います。

そしてこの期間の県の対応は、不当だったと言わざるを得ないと評価しました。

不当という言葉が出ましたが、不当と違法との違いをご存じでしょうか。

「不当」とは、実質的に妥当性を欠いていることをいう。対して「違法」とは、法秩序に違反していることをいう。 「不当」なものが必ずしも「違法」であるとは限らず、法に違反してさえいなければ、それは「適法」という扱いになる。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

要するに、2年間改善命令を出さなかった判断は、適法ではあるが、妥当性を欠いているということです。

第三者委員会の意見としては、

「もっと早く改善命令を出していたら業者も片付けを行ったのではないか。」

との見解ということです。

おっしゃることはごもっともなのですが、もし改善命令を出しても片付けないから刑事告発することとなったとして、警察に逮捕され、例えば略式起訴で罰金を払った後、行為者はまじめに片付けを行うのでしょうか。

「逮捕されて罰金払ったし、罪は償った。」

そう思うのは、私だけでしょうか。

廃棄物事案で難しいのは、廃棄物の片付けを行わせることと警察に突き出して逮捕してもらうことを両立するのは困難ということです。

実際、逮捕された業者がそのあと片付けをまじめに行ったということはあまり聞きません。

県環境整備課は「マニュアルの見直しは着手しており、提言の内容を受けてより良いものにするとともに、そのほかについても速やかに改善を図っていく」とコメントしています。

行政職員も一人の人間です。違法業者と相対するには、法律知識はもちろんのこと、事案に対応する経験とトーク力が必要となります。

他都道府県とも連携を図って、事案に対応できるスペシャリストが生まれることを期待しております。