身近な廃棄物が温暖化防止に!?
近い将来、家庭で揚げ物などに使用した油が高値で取引される日がくるかもしれません。
先日、読売新聞に面白い記事が掲載されていました。
二酸化炭素(CO2)の排出削減につながる次世代航空燃料「SAF」の原料として、天ぷらや揚げ物の調理で使い終わった植物油(廃食油)に注目が集まっている。SAFは世界中で使用が広がり、来年には国内でも製造が始まる。廃食油は争奪戦の様相を呈している。
2024年3月19日 読売新聞 廃食油が今や「お宝」、航空燃料活用へ争奪戦…取引価格は1年で3倍
なんとなんと、ご家庭から発生した廃食油が航空燃料に代わって、さらに二酸化炭素の排出削減につながるというのです。
ちなみに次世代航空燃料「SAF」とは次のようなものみたいです。
◆ SAF =Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)の略。廃食油や藻類などが原料。燃焼時に排出されるCO2は、原料の植物が光合成で吸収した量と相殺されるため、ジェット燃料に比べ、排出量を実質8割削減できる。
また、取引価格が2021年夏に46円/kgだったのが、1年足らずで120円台に跳ね上がったというのです。
まさに、廃食油が市場で取り合い状態の「お宝」になっています。
一般廃棄物処理の法律上の問題
食品工場やコンビニ、飲食店から排出された廃食用油は、産業廃棄物となるので、委託処理する際は、産業廃棄物処分業者が処理することができます。
問題は、家庭から排出された廃食用油です。
家庭から排出された廃食用油は、一般廃棄物であり、産業廃棄物処分業の許可を持っていても処理できず、一般廃棄物処分業の許可を取得しないと処理できません。
しかし、一般廃棄物処分業は産業廃棄物処分業と違って簡単には取得できません。
法律上、一般廃棄物処分業の許可権者は各市町村長にあります。
さらに、一般廃棄物の処理責任は各市町村にあり、一般廃棄物処理計画の作成が義務付けられています。
家庭ごみ(一般廃棄物)の処理は、その性質上公共性の高いものであるため、計画的に処理する必要があります。
もし、市町村が民間業者に一般廃棄物の処理を丸投げしていた場合、その業者が悪事をはたらき、許可取消しとなると家庭ごみの処理は滞り、たちまち生活環境が脅かされる事態になります。
そんな事態を防ぐため、基本的に家庭ごみの処理は各市町村が計画的に行うことになっています。
(ちなみに一般廃棄物処理施設の許可権者は都道府県知事になるのですが、それはまたの機会に。)
有価物としての処理
廃食油を廃棄物として処理するには法律上の壁が存在しますので、有価物としてリサイクルする方法が考えられます。
有価物のリサイクルとして市場が確立されているいい例が「金属くず」です。
廃棄物処理法上、規制しているのは廃棄物の処理ですから、有価物の処理に許可は存在しません。
市場が大きくなり、処理した廃食油の取引価値が大きく上がれば、廃棄物としての引取ではなく有価物として引取をできるため、廃棄物処理法の許可不要で処理をできるかもしれません。
自治体の取組
私も家でよく揚げ物をしますが、使用済の油はキッチンペーパーに吸わせたり、凝固剤で固めて燃えるごみとして捨てていました。
これはもったいないと思い、私の住んでいる自治体(札幌市)で廃食油を回収しているのか調べると、スーパー、ホームセンターをはじめ、市内約400カ所で無料で回収していることがわかりました。
これからはできるだけ廃食油を回収し、回収拠点に持ち込むことにしようと思います。
そんな身近な取組から温暖化を止めることができるかもしれません。