特定金属くず買受業の届出とは|北海道の金属くず業者が令和8年8月31日までにやるべきこと
「銅くずを買い取っているだけなのに、また新しい届出が必要なのか」
令和8年6月1日、盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(いわゆる金属盗対策法)が全面施行されました。銅を含む金属くずの買取を業として行う事業者には、営業所ごとに公安委員会への届出が新たに義務づけられています。
令和8年6月1日時点で営業していた方は、8月31日が期限です
既存の事業者には3か月の経過措置が設けられていますが、その猶予は令和8年8月31日まで。届出をしないまま営業を続けた場合、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。
添付書類には「交付から3か月以内」という縛りがあるため、書類集めから逆算すると残り時間はさらに短くなります。
この記事では、北海道で金属くずを扱う事業者の方に向けて、自社が届出の対象になるかどうかの判定方法から、必要書類、提出先、そして届出後に始まる記録義務までを、実務の順序に沿って整理します。北海道特有の「5方面制」による提出先の判断についても詳しく解説します。
特定金属くず買受業の届出とは
金属盗対策法は、令和7年6月20日に公布されました。全国的に銅線ケーブルの窃盗をはじめとする金属盗が急増したことを受けて制定された法律です。
盗まれた金属は、最終的にどこかで換金されます。そこで法律は、換金の出口となる買取事業者を把握し、取引の相手方を確認させることで、盗品の流通経路を断つという構造をとっています。届出制度は、その入口にあたる仕組みです。
ポイントは、「許可制」ではなく「届出制」という点です。審査に通らなければ営業できない性質のものではなく、要件を満たした届出書を提出すれば足ります。ただし、届出をせずに営業することには罰則があり、届出後は継続的な記録義務が発生します。「出せば終わり」の手続きではありません。
自社は届出が必要か|3ステップで判定する
最初に確認すべきは、自社が対象事業者に当たるかどうかです。順番に見ていきます。
ステップ1|銅を含む金属くずを買い取っているか
法律が対象とする「特定金属くず」とは、主として特定金属によって構成されている金属くずをいいます。そして施行時点で特定金属に指定されているのは、銅のみです。
実務でよく出てくるものとしては、次のようなものが挙げられています。
- 切断された銅線ケーブル
- 破損などにより室外機として使用できなくなったエアコン室外機
- 切断された銅製の物品(銅板屋根、橋の銘板など)
鉄スクラップのみを扱っている、アルミ缶だけを回収している、といった場合は対象外です。逆に、解体現場から出た配線くずを買い取っているのであれば、次のステップに進んでください。
ステップ2|「主として銅」に当たるか
銅が混ざっていれば何でも該当するわけではありません。「主として」の判断には、次のいずれかに当てはまるかという考え方が示されています。
- 買取額の半分以上を銅の価格が占めている
- 買取重量の半分以上を銅の重量が占めている
価格ベースと重量ベースのどちらかを満たせば該当する、という点に注意してください。被覆付きの電線は、重量では銅が半分に届かなくても、価格では銅が大半を占めるケースがあります。「重さで見たら半分ないから対象外」と判断してしまうと、届出漏れにつながります。
また、取引ごとに毎回判定するというより、そうした買取を業として行っているかという営業の実態で見ることになります。年に一度たまたま持ち込まれた、という程度でなく、継続的に銅くずを引き取っているのであれば、対象と考えて準備を進めるのが安全です。
ステップ3|いつまでに届け出るか
期限は、営業を始めた時期によって分かれます。
【令和8年6月1日時点ですでに営業していた場合(既存事業者)】 令和8年8月31日まで
【これから新たに始める場合】 営業を始める前
【届け出た内容に変更が生じた場合】 変更から14日以内(登記事項証明書を添付すべき場合は20日以内)
北海道内で金属くず回収業の許可を受けて営業している事業者の多くは、1つめの既存事業者に該当します。
届出をしないとどうなるか
届出をしないまま特定金属くず買受業を営んだ場合、6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されることとされています。名義貸しについても罰則が設けられています。
あわせて、公安委員会には報告の徴収と立入検査の権限があり、法律に違反した場合には指示や営業停止命令といった行政処分を行うことができるようになりました。届出をしていない状態は、単に「手続きが済んでいない」というだけでなく、事業継続そのもののリスクになります。
届出に必要な書類
提出書類
提出するのは営業開始届出書(別記様式第1号)です。様式は北海道警察のウェブサイトからダウンロードできます。
添付書類
個人か法人かで、必要な添付書類が変わります。
【個人の場合】
- 営業所と特定金属くず保管場所の平面図、および周囲の簡単な図
- 住民票の写し(本籍。外国人の場合は国籍が記載されたもの)
【法人の場合】
- 営業所と特定金属くず保管場所の平面図、および周囲の簡単な図
- 定款
- 登記事項証明書
- 代表者の住民票の写し(本籍。外国人の場合は国籍が記載されたもの)
添付書類には3か月の有効期限がある
添付書類は、作成日または交付日から3か月以内のものが有効です。ここは見落としやすいポイントなので、手元にある書類の日付を必ず確認してください。
なお、住民票は「本籍が記載されたもの」を取得する必要があります。コンビニ交付でも取得できますが、本籍の記載は選択式になっていることが多く、初期設定のままだと省略されて出てきます。取り直しが最も多く発生するのがこの一点です。
どこに届け出るか|北海道は5方面に分かれている
届出は、営業所ごとに、その所在地を管轄する警察署長を経由して公安委員会に提出します。
ここで北海道特有の事情が出てきます。北海道は公安委員会の行政区分が札幌・函館・旭川・釧路・北見の5方面に分かれており、営業所が複数ある場合の提出先が、どの方面に属するかで変わります。
【複数の営業所が同じ方面内にある場合】 例:小樽と苫小牧(いずれも札幌方面) → いずれか一方の警察署にまとめて提出できます
【営業所が複数の方面にまたがる場合】 例:釧路(釧路方面)と函館(函館方面) → それぞれの警察署に提出が必要です
まとめて複数営業所の届出をする場合、添付書類のうち内容が同一のもの(定款や登記事項証明書など)は、1通の営業開始届出書に添付すれば足り、営業所の数だけ用意する必要はありません。書類の取得コストを抑えられるので、複数拠点をお持ちの方は押さえておきたいところです。
なお届出は、デジタル庁の総合窓口サイト「e-Gov」の電子申請システムからも行えます。
届出は入口にすぎない|同時に始まった4つの義務
この制度で本当に負担が大きいのは、届出そのものよりも届出後の日常業務です。届出を出した時点で、次の4つが継続的な義務として発生します。
① 買取相手の本人確認
特定金属くずを買い取る際は、相手方の本人確認が必要です。個人であれば運転免許証、在留カード、特別永住者証明書、マイナンバーカードなど顔写真付きの本人確認書類の提示を受ける方法が基本になります。
相手が法人の場合は、取引の任に当たっている担当者本人の確認に加えて、法人としての確認も必要です。登記事項証明書や印鑑登録証明書の提示を受ける方法などが定められています。
非対面取引についても、本人確認書類の写真と顔写真の送信を受ける方法などが用意されていますが、対面より手順が細かくなります。
② 本人確認記録の作成と3年間の保存
本人確認を行ったら、直ちに本人確認記録を作成しなければなりません。文書でも電磁的記録でも構いません。本人確認を行った者の氏名、記録の作成者の氏名、書類の提示を受けた日付などを記載し、買受けの日から3年間保存します。
③ 取引記録の作成と3年間の保存
買受けを行った場合も、直ちに取引記録を作成します。記録すべき事項は次のとおりです。
- 買受けの相手方の氏名または名称
- 買受けの日付および時刻
- 買い受けた金属くずの量・特徴・価額
- 代金の支払方法
- 口座振込の場合は、金融機関名・口座番号など口座を特定できる事項
こちらも保存期間は買受けの日から3年間です。「時刻」まで求められている点は、既存の伝票様式では対応できていないことが多いので、確認してみてください。
④ 氏名等の表示と、不正品の申告
届出後は、公衆の見やすい場所に、明瞭に判読できる大きさと書体で氏名または名称等を表示する必要があります。これに加えて、ウェブサイトでの表示も求められます(省略できる場合もあります)。自社サイトをお持ちの事業者は、店頭の掲示だけでは足りない点に注意してください。
また、取引の態様などから、買い受ける特定金属くずが盗難等に由来するものと疑われるときは、直ちに警察官に申告する義務があります。
■ 届出と同時に整えておきたいもの
- 本人確認記録の様式(紙またはデータ)
- 取引記録の様式(時刻・支払方法・口座情報の欄を含むもの)
- 3年間の保存方法とファイリングのルール
- 店頭掲示物と、ウェブサイト上の表示
- 現場担当者への説明資料
よくあるご質問
Q. 金属くず回収業の許可を持っていれば、届出は不要ですか?
いいえ。北海道条例に基づく金属くず回収業の許可と、金属盗対策法に基づく特定金属くず買受業の届出は別の制度です。許可をお持ちで、かつ銅を主とする金属くずの取引を続ける方は、あらためて届出が必要になります。
Q. 届出に手数料はかかりますか?
届出制度であるため、許可申請のような審査手数料は想定されていません。ただし、住民票や登記事項証明書の交付手数料は別途かかります。
Q. 8月31日までに間に合わなかった場合はどうなりますか?
経過措置の期間を過ぎると、届出をしないまま営業している状態になります。まずは所轄の警察署に連絡のうえ、速やかに届出を行ってください。放置するほど不利になります。
Q. 銅以外の金属も、いずれ対象になりますか?
法律上の「特定金属」は施行時点で銅のみですが、対象が固定されているわけではありません。金属盗の情勢によっては、将来的に追加される可能性があります。
Q. 記録は紙で保存しないといけませんか?
文書と電磁的記録のどちらでも構いません。3年間確実に保存でき、必要なときに提示できる形であれば、データ管理でも問題ありません。
まとめ
- 金属盗対策法が令和8年6月1日に全面施行され、銅を主とする金属くずの買取には公安委員会への届出が必要になった
- 令和8年6月1日時点で営業していた事業者の届出期限は8月31日
- 該当するかは「銅を扱っているか」「価格または重量の半分以上を銅が占めるか」で判断する
- 添付書類は交付から3か月以内。住民票は本籍の記載が必要
- 北海道は5方面制のため、複数営業所がある場合は提出先の整理が要る
- 届出よりも、本人確認・取引記録の3年間保存という日常業務の負担のほうが実は大きい
- 改正された北海道条例では、銅以外も含めすべての金属くず取引に記録義務がかかる
制度が始まったばかりで、窓口の運用も流動的な時期です。判断に迷う場合は、所轄の警察署または当事務所までお問い合わせください。
当事務所のサポート
はしもと行政書士事務所では、特定金属くず買受業の届出について、書類の取得から警察署への提出までを代行しています。産業廃棄物処理業の許可審査を担当していた経験を活かし、届出そのものだけでなく、産業廃棄物処理業許可や北海道条例との関係を含めて、事業全体の観点からご案内します。
ご依頼の流れ
- お問い合わせ(電話・メール)— 現在の営業状況を伺い、届出の要否を判断します
- お見積り — 営業所の数と急ぎの度合いに応じてご提示します
- 書類の収集 — 住民票などは職務上請求により当事務所で取得できます
- 届出書・平面図の作成
- 所轄警察署へ提出
- 記録様式のご提供 — 本人確認記録・取引記録のひな形をお渡しします
ご用意いただくもの
初回のご相談時には、次のものがあるとスムーズです。すべて揃っていなくても構いません。
- 金属くず回収業許可証(お持ちの場合)
- 営業所と保管場所のおおよその配置がわかるもの(住宅地図、手描きのメモでも可)
- 定款(法人の場合)
- 現在お使いの買取伝票の見本
料金の目安
【特定金属くず買受業の届出(1営業所)】 個人:45,000円(税込49,500円) 法人:55,000円(税込60,500円)
【営業所を追加する場合】 1か所につき 15,000円(税込16,500円)
【複数の方面にまたがる場合】 届出先1署につき 20,000円(税込22,000円)
【本人確認記録・取引記録の様式整備】 50,000円〜(税込55,000円〜)
上記のほか、住民票・登記事項証明書の交付手数料などの実費を申し受けます。お急ぎの対応をご希望の場合や、ヤードの規模が大きく平面図の作成に時間を要する場合は、別途お見積りいたします。
ご相談は無料です。まずは「うちは対象になるのか」という判断だけのご相談でも構いません。銅の混ざり方や取引の実態を伺えば、その場でおおよその見当をお伝えできます。期限が迫っている場合は、その旨をお伝えいただければ優先して対応します。

