スクラップヤードに許可制度が導入される?|廃棄物処理法改正の経緯を解説

令和8年4月10日に閣議決定された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案」は、第221回国会(衆議院:令和8年5月26日可決、参議院:令和8年6月12日可決)を経て、令和8年6月19日に公布されました。
今回の改正の中で廃棄物処理業者が一番着目するポイントは、「スクラップヤードへの許可制導入」です。しかし、「なぜこの法律改正によりスクラップヤードが規制されることになったのか?」と疑問を持つ方も多いと思います。

私も今回の法改正の議論を初めから追っていましたが、まさか法律の内容がここまで変わるとは思ってもいませんでした。

そこで、今回は、改正の議論となった中央環境審議会「廃棄物処理制度小委員会」全8回の審議内容を、時系列で解説します。

📌 この記事でわかること

  • 廃棄物処理制度小委員会とは何か
  • 審議会が設置された3つの背景
  • 全8回の審議内容(2025年2月〜12月)
  • 中間取りまとめが示した「許可制」の必然性

1. 廃棄物処理制度小委員会とは何か

「廃棄物処理制度小委員会」とは、環境大臣の諮問機関である「中央環境審議会 循環型社会部会」の下に設置された専門委員会です。

廃棄物処理法の見直しに向けた制度設計を担い、学識経験者・法律家・産業界の専門家・自治体関係者などで構成されます。この委員会が令和7年2月から12月にかけて計8回開催され、スクラップヤード規制を含む廃棄物処理法改正の骨格が作られました。

2. 審議会が設置された3つの背景

なぜこの時期に委員会が設置されたのか。主な理由は3つあります。

【理由①】平成29年改正の全面施行から「5年」の見直し時期が到来
平成29年(2017年)の廃棄物処理法改正には「施行後5年を経過した場合に施行状況を勘案し必要な見直しを行う」という附則が定められていました。平成29年の法改正の内容である電子マニフェストの義務化に関する改正部分の施行日が、「令和2(2020年)4月1日」だったため、令和7年(2025年)がちょうどその節目にあたります。

【理由②】届出制では対応しきれない問題が深刻化
平成29年に創設された有害使用済機器届出制度は、家電4品目・小型家電28品目のみが対象です。しかし、金属スクラップ・廃鉛蓄電池など対象外の物品でも火災・水質汚染・悪臭の被害が増加しており、制度の抜け穴が問題となっていました。

【理由③】令和6年能登半島地震の教訓を反映する必要
令和6年1月の能登半島地震で、市町村の災害廃棄物処理計画の不備や民間処理施設の活用の遅れが浮き彫りになりました。この教訓を制度に組み込む必要が生じました。

3. 全8回の審議の流れ(一覧)

開催日主な議題
第1回令和7年2月18日現状把握・課題の確認
第2回令和7年3月7日自治体・業界からのヒアリング
第3回令和7年4月8日災害廃棄物対策の検討
第4回令和7年4月25日ヤード規制の制度設計
第5回令和7年5月23日論点整理
第6回令和7年6月24日⭐ 中間取りまとめの決定
第7回令和7年10月8日制度骨子案の審議
第8回令和7年12月19日最終的な制度設計の確認
令和8年4月10日改正法案 閣議決定
令和8年6月19日改正法 公布

4. 第1回(令和7年2月18日)現状把握・課題の確認

審議会の第1回では、委員会の設置とともに全国の実態調査結果が共有されました。

📊 実態調査の主な数字(第1回資料4より)

全国の再生資源物保管等事業場として把握された件数は3,260件(有害使用済機器届出件数612件を除く)。このうち165事業場・211件で生活環境保全上の支障が発生。内訳は騒音・振動87件、飛散・流出44件、火災27件でした。

この調査で明らかになった最大の問題は、「規制の網がかかっていないため自治体が指導できない」という現実でした。一部の自治体が独自条例を制定しても、規制のある自治体から規制のない自治体へ事業場を移転する業者が存在することも報告されました。

5. 第2回(令和7年3月7日)自治体・業界からのヒアリング

第2回は、行政・業界の最前線から直接意見を聞く場として開催されました。主な意見は以下のとおりです。

【自治体側から】

  • 千葉県:条例制定後も規制逃れのため他県へ移転する業者がいる。全国統一の法的根拠がないと実効性が担保できない。
  • 三重県:有価物と廃棄物の判断基準が不明確で、リユース品と主張されると指導に苦慮するケースがある。

【業界側から】

日本鉄鋼連盟・日本アルミニウム協会などから、不適正なヤードを経由した低品質スクラップの市場流入が適正事業者の原料調達・品質管理に悪影響を与えているという声が上がりました。適正事業者が競争で不利になる現状の是正を強く求めました。

6. 第3回(令和7年4月8日)災害廃棄物対策の検討

第3回は能登半島地震の教訓を踏まえた「災害廃棄物対策」が中心議題でした。以下の方向性が示されました。

  1. 市町村に災害廃棄物処理計画の策定を義務付ける
  2. 都道府県による民間最終処分場の指定制度を新設する
  3. JESCOに災害廃棄物に関する事業を追加し、自治体支援機能を強化する

これまで災害廃棄物処理計画の策定は義務ではなかったため、自治体によってはその策定が遅れている現状がありました。
兵庫県においても、県がサポートしながら全市町の策定に向けて努力していたことを思い出しました。

温暖化や異常気象、地震などにより災害が多発する昨今にあっては、速やかな災害廃棄物の処理に向けた計画を策定が重要です。これまで策定が遅れていた自治体においても、その策定が法律で義務付けることは必要不可欠な改正と言えます。

7. 第4回(令和7年4月25日)ヤード規制の制度設計へ

第4回で、スクラップヤードの規制設計の議論が本格化しました。「ヤード環境対策検討会報告書(令和6年度)」をもとに以下の方向性が確認されました。

⚠️ 廃鉛蓄電池の緊急性:鉛くず輸出が令和2年比で約10倍に急増

令和5年の鉛くず輸出量は令和2年の約10倍に達しており、不適正輸出事例も確認。国内での適正処理確保と輸出時の規制強化(環境大臣確認)が急務として議論に上がりました。

  • 許可制の導入:届出制より実効性が高い許可制が必要との結論。自治体条例の多くがすでに許可制を採用していることが根拠として示された。
  • 保管基準の設定:高さ制限・囲いの設置・消火設備・汚水流出防止など具体的な施設・管理基準を法定化する方向性を確認。
  • 輸出規制:廃鉛蓄電池・電子スクラップの輸出時に環境大臣の確認を義務付ける制度の創設を検討。

8. 第5回(令和7年5月23日)論点整理

これまでの審議を踏まえ、第6回「中間取りまとめ」に向けた論点が整理されました。

  1. 規制の対象物品をどう定義するか(有価物・廃棄物の区分、廃鉛蓄電池の特別扱い)
  2. 許可基準にどのような要件を盛り込むか(欠格要件・施設基準・記録義務など)
  3. 既存の産廃許可やリサイクル法許可との関係をどう整理するか(許可みなし)
  4. 輸出規制の対象物品と手続きの具体的な設計

9. 第6回(令和7年6月24日)中間取りまとめの決定

第6回で「今後の廃棄物処理制度の検討に向けた中間取りまとめ」が正式に決定されました。これが今回の法改正の骨格となる文書です。

📋 中間取りまとめで明記された3つの核心

  1. 全国統一の許可制が必要——条例の多くが許可制を採用していることを踏まえ、より実効性の高い許可制が必要であることを明記。
  2. 90以上の自治体が全国統一制度を要望——規制逃れのため事業場を移転する業者が存在し、90以上の自治体から全国統一制度の創設が要望されていることを確認。
  3. 廃鉛蓄電池の不適正輸出防止——国内適正処理と輸出先国での環境保全のため、環境大臣確認制度の創設が必要。

10. 第7・8回(令和7年10〜12月)骨子案から最終確認へ

第7回(令和7年10月8日):制度骨子案の審議
中間取りまとめを受け、法改正の「骨子案」が審議されました。改正法の具体的な条文構造の方向性が示され、各論点に対する委員意見が集約されました。

第8回(令和7年12月19日):最終的な制度設計の確認
最終回として、法案化に向けた制度設計の確認が行われました。この審議の結論が令和8年4月10日の閣議決定へとつながっています。

まとめ:審議会が示した「許可制」の必然性

全8回の審議を振り返ると、許可制の導入は「政策的理念」ではなく「現場が積み重ねた必要性」から導き出された結論だということがわかります。

  • 全国3,260件超のスクラップヤードのうち、相当数で火災・水質汚染・悪臭の被害が発生
  • 届出制では実効性がなく、自治体独自条例では規制逃れが起きて限界がある
  • 90以上の自治体が「全国統一制度の創設」を強く要望
  • 鉛くず輸出の急増・不適正輸出事例という経済安全保障上の問題が顕在化
  • 能登半島地震の教訓を踏まえた災害廃棄物対策の充実という時代の要請

次回は実際に交付された法律の条文から、許可対象者や許可の具体的な要件などについて解説します。

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