排出事業者が廃棄物処理法を理解する重要性とは
廃棄物処理法では、産業廃棄物の処理責任は排出事業者にあることを明確に定めています。しかし、実際の現場では処理業者が法律に詳しいということもあり、委託契約書のひな形の提供やマニフェストの使用方法などをサービスとして提供している状況ではないでしょうか。
委託契約書の提供やマニフェストの使用方法の提案を受けることは違法ではありませんが、その内容や記載事項を誤ると排出事業者が罰則に問われることになります。
今回は、排出事業者が産業廃棄物を処理する際に理解しておくポイントを解説します。
排出事業者責任とは?
そもそも産業廃棄物の処理が排出者の責任となっている根拠を法律から確認していきます。
まずは環境基本法を確認してみましょう。
(事業者の責務)
環境基本法第8条
事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずるばい煙、汚水、廃棄物等の処理その他の公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する。
環境基本法は、環境保全に関する基本理念や、国、地方公共団体、事業者、国民の責務を定めたものですので、直接的な罰則はありませんが、廃棄物の事業者処理を定めています。廃棄物に関する具体的な規制や義務は、廃棄物処理法などの個別法で定められています。
それでは、廃棄物処理法を確認しましょう。
(事業者の責務)
廃棄物処理法第3条
1 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。
2 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物の再生利用等を行うことによりその減量に努めるとともに、物の製造、加工、販売等に際して、その製品、容器等が廃棄物となつた場合における処理の困難性についてあらかじめ自ら評価し、適正な処理が困難にならないような製品、容器等の開発を行うこと、その製品、容器等に係る廃棄物の適正な処理の方法についての情報を提供すること等により、その製品、容器等が廃棄物となつた場合においてその適正な処理が困難になることのないようにしなければならない。
3 略
まず、第3条第1項において、「事業活動に伴って生じた廃棄物=産業廃棄物」は、事業者が自らの責任で適正に処理することが義務付けられています。この条文がまさに「排出事業者責任」の根拠となります。
また、同条第2項では、事業者は処理が困難な製品を作らないようあらかじめ製品を作る際に考えることを義務付けられています。この考えを「拡大生産者責任」と言います。
産業廃棄物を処理する際に必要な知識とは?
産業廃棄物の処理は「排出事業者責任」ということがわかりましたが、実際にはどのようなことを覚えておけばよいのでしょうか。
事業者の処理に関しては、次の条文に記載があります。
(事業者の処理)
廃棄物処理法第12条
1 事業者は、自らその産業廃棄物の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準(以下「産業廃棄物処理基準」という。)に従わなければならない。
2 事業者は、その産業廃棄物が運搬されるまでの間、環境省令で定める技術上の基準(以下「産業廃棄物保管基準」という。)に従い、生活環境の保全上支障のないようにこれを保管しなければならない。
3~4 略
5 事業者は、その産業廃棄の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第14条第12項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。
6 事業者は、前項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、政令で定める基準に従わなければならない。
7 事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
8~13 略
※条文を見やすくするためカッコ書きを省略しています。
法第12条には事業者が処理する際の各基準が記載されています。第7項は、基準や義務とは異なりますが、排出事業者が産業廃棄物を処理を委託する際の処理状況確認を努力義務としている条文となります。
排出事業者の基準をまとめると以下のとおりになります。
①産業廃棄物処理基準
②産業廃棄物保管基準
③産業廃棄物処理委託基準
以上の基準のうち③の委託基準には「委託契約書」の規定があります。委託契約書に関して詳しく確認したい方は次の記事をご確認ください。
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これらの基準に加え重要な知識としては、産廃を処理された方ならご存じだと思いますが、産業廃棄物処理管理表(マニフェスト)の交付と保存の義務です。
(産業廃棄物管理票)
廃棄物処理法第12条の3
1 その事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者は、その産業廃棄物を交付しなければならない。
2 前項の規定により管理票を交付した者は、当該管理票の写しを当該交付をした日から環境省令で定める期間保存しなければならない。
※条文を見やすくするためカッコ書きを省略しています。
条文の中でも、赤字で記載した項目はこの後解説しますが、直罰規定の対象となるので要注意です。
ここまでの条文から排出事業者の義務をまとめると主に以下のようなものがあります。
① 委託契約書の締結義務
② マニフェスト交付、保管の義務
③ 産廃を排出するまでの保管基準遵守の義務
④ 委託した産廃が適正処理されたことの確認の努力義務
マニフェストや排出事業者の義務に関しては、過去の記事をご参照いただければと思います。
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違反すると問われる罰則は?
ここまで排出事業者に適用される基準を解説してきましたが、基準違反をすると法律上罰せられるのでしょうか。
もちろんその答えは、「Yes」です。
今回解説した基準を中心に排出事業者が廃棄物処理法に違反すると罰せられるものを以下にまとめました。
該当する内容 | 該当条文 | 刑罰 |
事業者が産業廃棄物の委託基準に違反すること。(法第12条第5項) | 法第25条第1項第6号 | 5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金に処し又はこれを併科する。 |
事業者が産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合に、政令で定める基準に従わないこと。(法第12条第6項) | 法第26条第1号 | 3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処し又はこれを併科する。 |
管理票を交付せず、又は規定する事項を記載せず、もしくは虚偽の記載をして管理票を交付した者(法第12条の3第1項) | 法第27条の2第1号 | 1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金に処し又はこれを併科する。 |
管理票又はその写しを保存しなかった者(法第12条の3第2項) | 法第27条の2第5号 | 1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金に処し又はこれを併科する。 |
特に無許可業者への委託(法第12条第5項)は、廃棄物処理法の中で最も重い刑罰となります。
また、委託契約書やマニフェストの交付、保管など処理業者任せになりそうな内容が直罰規定となっていますので、知識が不足している方は特に学んでおいた方がよいでしょう。
行政の立入検査は、特段の理由がない限り無通告で行われます。
知らぬ間に廃棄物処理法違反とならないよう、常に会社内で知識を共有し、不適正な処理を未然に防止しましょう。
まとめ
今回は、排出事業者が廃棄物処理法を理解する必要性を解説しました。今回のポイントは、
・産業廃棄物の処理は排出事業者の責任である
・産業廃棄物を処理する際は、法律で遵守すべき基準がある
・無許可業者への委託や委託契約書の記載内容不備、マニフェストの不交付などは直罰規定である
当事務所は、公務員として産廃の排出事業者の指導をしていた経験を活かし、お客様を全力でサポートします。
貴社の要望に合わせた廃棄物処理法に関する講習会の開催なども承っておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。