産業廃棄物の安定型、管理型って何?

廃棄物処理法では、産業廃棄物を20種類に分類していますが、現場での呼び方は様々ではないでしょうか。
建設業界であれば、代表的な建設系産業廃棄物として「ガラ」、「石こうボード」、「畳」などがあります。
これらの廃棄物も必ず先ほど申し上げた20種類に該当します。
そもそも法律で定義する20種類に該当しない場合、一般廃棄物になるわけです。

それでは、建設系マニフェストにおいて、「混合(安定型のみ)」、「混合(管理型のみ)」という表記をみたことはないでしょうか。
何が安定で何を管理されている廃棄物?と思われると思いますが、安定型の意味は法律に記載があります。

(産業廃棄物の収集、運搬、処分等の基準)
第6条

三 産業廃棄物の埋立処分に当たつては、第三条第一号イ(ルに規定する場合にあつては、(1)を除く。)及びロ並びに第三号ニ及びホの規定の例によるほか、次によること。
 イ 次に掲げる産業廃棄物(特別管理産業廃棄物であるものを除く。以下「安定型産業廃棄物」という。)以外の産業廃棄物(特別管理産業廃棄物であるものを除く。)の埋立処分は、地中にある空間を利用する処分の方法により行つてはならないこと。
  (1) 廃プラスチック類(自動車等破砕物(自動車(原動機付自転車を含む。)若しくは電気機械器具又はこれらのものの一部(環境大臣が指定するものを除く。)の破砕に伴つて生じたものをいう。以下同じ。)、廃プリント配線板(鉛を含むはんだが使用されているものに限る。以下同じ。)、廃容器包装(固形状又は液状の物の容器又は包装であつて不要物であるもの(別表第五の下欄に掲げる物質又は有機性の物質が混入し、又は付着しないように分別して排出され、かつ、保管、収集、運搬又は処分の際にこれらの物質が混入し、又は付着したことがないものを除く。)をいう。以下同じ。)及び水銀使用製品産業廃棄物であるものを除く。)
  (2) 第二条第五号に掲げる廃棄物(事業活動に伴つて生じたものに限る。以下「ゴムくず」という。)
  (3) 第二条第六号に掲げる廃棄物で事業活動に伴つて生じたもの(自動車等破砕物、廃プリント配線板、鉛蓄電池の電極であつて不要物であるもの、鉛製の管又は板であつて不要物であるもの、廃容器包装及び水銀使用製品産業廃棄物であるものを除く。)
  (4) 第二条第七号に掲げる廃棄物で事業活動に伴つて生じたもの(自動車等破砕物、廃ブラウン管(側面部に限る。)、廃石膏こうボード、廃容器包装及び水銀使用製品産業廃棄物であるものを除く。)
  (5) 第二条第九号に掲げる廃棄物(事業活動に伴つて生じたものに限る。第七条第八号の二において「がれき類」という。)
  (6) (1)から(5)までに掲げるもののほか、これらの産業廃棄物に準ずるものとして環境大臣が指定する産業廃棄物

廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和四十六年政令第三百号)

埋立処分にあたっての基準に「安定型産業廃棄物」が定義されています。
条文では、読みにくいので条文から抽出すると以下の6つが安定型産業廃棄物ということになります。
ただし、現状6つ目の指定はありませんので、「安定型産業廃棄物」とは以下5つの産業廃棄物ということになります。

①廃プラスチック類
②ゴムくず
③金属くず
④ガラスくず、コンクリートくず(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものを除く。)及び陶磁器くず
⑤がれき類
⑥環境大臣が指定する産業廃棄物

これらの産業廃棄物は、雨水などによって性状が変化しにくく、悪臭などの発散や経年変化が少ない廃棄物として比較的性状が安定しているため安定型ということです。

それでは、「管理型産業廃棄物」はというと、こちらは法律に定義がありません。
安定型産業廃棄物以外の廃棄物で有害物質の基準を超えない廃棄物「管理型産業廃棄物」とされています。
また、有害物質の基準を超えた廃棄物は「遮断型産業廃棄物」となります。

この3つの分類は、産業廃棄物処理施設を確認することで理解ができます。
産業廃棄物処理施設の条文では、施設を3つに分けています。

(産業廃棄物処理施設)
第7条 法第15条第1項の政令で定める産業廃棄物の処理施設は、次のとおりとする。
(中略)
14 産業廃棄物の最終処分場であつて、次に掲げるもの
  第六条第一項第三号ハ(1)から(5)まで及び第六条の五第一項第三号イ(1)から(7)までに掲げる産業廃棄物の埋立処分の用に供される場所
  安定型産業廃棄物の埋立処分の用に供される場所(水面埋立地を除く。)
 ハ イに規定する産業廃棄物及び安定型産業廃棄物以外の産業廃棄物の埋立処分の用に供される場所(水面埋立地にあつては、主としてイに規定する産業廃棄物及び安定型産業廃棄物以外の産業廃棄物の埋立処分の用に供される場所として環境大臣が指定する区域に限る。)

条文ではわかりにくいので、今までの表現で記載すると次のとおりです。

14号イ → 遮断型産業廃棄物の最終処分場
14号ロ → 安定型産業廃棄物の最終処分場
14号ハ → 管理型産業廃棄物の最終処分場

これらのことから廃棄物の危険性(生活環境保全上の支障が生じるか)を比較すると、
安定型産業廃棄物 < 管理型産業廃棄物 < 遮断型産業廃棄物
であることがわかります。
もちろん最終処分場を設置する際の基準も危険性によって変わってきます。

遮断型最終処分場は、有害物質の基準を超えている産業廃棄物ですので、外部への流出が認められると速やかに生活環境に支障が生じます。
そこで、コンクリートなどの不当浸透性の材料で産業廃棄物を閉じ込める(遮断する)構造とする必要があります。

遮断型最終処分場
(出典)国立環境研究所

管理型最終処分場は、遮断型ほど有害ではありませんが、性状が不安定で雨水等の浸透などによって水が汚染される可能性があるため、埋立場所には遮水シートを施し、産業廃棄物を通る浸透水を排水処理施設で処理して排水する必要があります。よって、排出水や埋め立てる産業廃棄物を管理する必要があります。

管理型最終処分場
(出典)国立環境研究所

安定型最終処分場は、性状の安定している産業廃棄物であるため、いわば穴に産業廃棄物を埋め立てることになります。

安定型最終処分場
(出典)国立環境研究所

それぞれの産業廃棄物処理施設の解説にちりばめられた言葉が、今回のタイトルにある「安定型」「管理型」を理解するキーワードにしていただければと思います。

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