【連載】廃棄物収集運搬業者に運送業許可は必要なのか?~歴史的背景を紐解く~

顧問先である産業廃棄物処理業者様から問い合わせの中で、最近増えているのが運送業許可に関する内容です。
今回は、廃棄物収集運搬業と運送業許可の関係について、個人的な見解を加えながら数回にわたって解説したいと思います。
※令和8年3月16日通知により、その取扱いは明確になりましたがこれまでの経緯を含め本連載にて解説します。
事の発端は、貨物自動車運送事業法の改正に伴い、国土交通省が公表した次の資料にあると考えられます。
令和7年11月21日 物流・自動車局貨物流通事業課 「違法な「白トラ」への規制が来年4月1日から強化されます」
この資料の中に、次のような記載があります。
| 2.概要 (1)貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令改正法のうち下記事項について、令和8年4月1日より施行することとします。 ①違法な白トラの利用に係る荷主等への規制 ○ 荷主等が、白ナンバーのトラックで有償貨物運送を行う者(以下「違法な白トラ事業者」という。)に運送委託を行った場合に、新たに処罰の対象となります。 ○ 荷主等が、違法な白トラ事業者に運送を委託している等の疑いがある場合には、国土交通大臣から当該荷主等に要請等を行うことができます。 |
この内容を廃棄物処理法の言葉で言い換えると、
「荷主=排出事業者」
「白ナンバーのトラックで有償貨物運送を行う者=廃棄物収集運搬業者」
という構図が思い浮かびます。
その真偽は、まずは置いておいて、この問題の歴史的な背景を確認していきます。
廃棄物を車両で運搬する行為は、廃棄物処理法により規制されるものと思われがちですが、有償での輸送については貨物自動車運送事業法が関連してきます。
すなわち、廃棄物収集運搬業という行為が2つの法律に規制され得る構造となっています。
この問題は、行政の縦割り構造を如実に反映していると言え、半世紀近くにわたってこの二重規制の問題が十分に整理されないまま今日に至っているという経緯があります。
本連載では、「廃棄物収集運搬業者に運送業許可は本当に必要なのか?」という疑問について、私自身の審査経験も踏まえながら検証していきます。
序章となる今回は、問題の本質を理解するため、歴史的背景を確認します。
1.問題の起点:2つの法律の管轄が混在
廃棄物収集運搬業は、もともと廃棄物処理の一環として環境省(当時は厚生省)が所管する「廃棄物処理法」により規制されてきました。廃棄物収集運搬業の規制目的は、「廃棄物の飛散・流出の防止や適正な処分の確保」という、環境保全上の要請に基づくものです。
一方、運送業は、国土交通省(当時は運輸省)が所管する「貨物自動車運送事業法」により規制されています。運送業は、「他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業」を規律しています。その規制目的は、「輸送の安全、運転者の労働条件、事業の適正な運営を目的」としています。
このように規制目的は異なるものの、「運搬」という行為を規制する法律が2つの省庁の管轄にまたがる構造が生まれたことが、今回の問題である「青ナンバー(緑ナンバー)問題」の起点であると言えます。
2.白ナンバーによる運搬が定着?
当時の実務を直接見てきたわけではないため、以下はあくまで私見となりますが、審査経験も踏まえて廃棄物収集運搬業者が白ナンバーで運搬をしている経緯を考察します。
廃棄物処理法が施行されて間もない1970年代当時、産業廃棄物収集運搬業者の多くは自家用車両(白ナンバー)を使って事業を行ってたと考えられます。
これは、当時の行政の優先課題は廃棄物の適正処理であり、車両のナンバーの色よりも「適切に廃棄物が処理されているか」が重要視されていたためと考えられます。
また、現代においても、廃棄物処理法では廃棄物収集運搬業の許可要件として運送業許可の取得を求めていません。そのため、白ナンバーの車両でも当然に許可取得が可能です。
私自身も現職時代、車両ナンバーの種別に関わらず許可を行っており、それが実務上当然の運用だと思っていました。
こうした背景のから、「産業廃棄物収集運搬業許可を取得していれば白ナンバーで他社の廃棄物を運んでも問題ない」という認識が、業界内で自然に定着していったと考えられます。
| 当時の業界の共通認識 「廃棄物処理法の許可を持っていれば、運送業の許可は不要?」この認識で行政側においても明確に否定されることなく、長期間にわたり業界全体に浸透してきました。 現に今日に至るまで産業廃棄物収集運搬業の許可を取得する際に緑ナンバーの使用は求めらていません。 |
3.環境省と国土交通省の見解は
この点について、環境省と国土交通省の見解を確認しました。
国土交通省のホームページにおいて、本問題に対し平成15年に見解が示されています。
【貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)】(貨物自動車運送事業法第2条第2項)質問原文→照会内容 回答原文→回答内容
(質問内容)
産業廃棄物の収集運搬業(積み替え保管を含む)を現有の車両1台を用いて有償で運搬致します。ただし、中間処理施設及び最終処分施設はありません。
当社は他の事業で収益を得ておりますが、リサイクル法等の関係で、当社請負事業で発生する産業廃棄物を元請けの指示により、元請け指示場所に運搬を行うために廃棄物収集運搬業の許可を取得予定ですが、元請けの需要で、収集運搬費用を徴収して、有償で自社車両を用いて運搬予定ですが、廃棄物収集運搬業のみでの事業展開でなく、廃棄物の適正処理を行うために廃掃法の収集運搬業を行いますので、当面1両で事業を行う予定です。
貨物自動車運送事業法法令(条項)基づく不利益処分の適用の可能性があるかどうか ?
貨物自動車運送事業法法令(条項)に基づく許認可等を受ける必要があるかどうか(許認可等を受けない場合、罰則の対象があるかどうか) ?
貨物自動車運送事業法法令(条項)に基づく届出・登録・確認等を受ける必要があるかどうか(届出・登録・確認等を受けない場合、罰則の対象があるかどうか)?(回答内容)
1 回答
照会のあった事実については、照会法令の適用対象となる。2 当該事実が照会法令の適用対象となることに関する見解及び根拠
貨物自動車運送事業とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業をいい、当該行為については、貨物自動車運送事業法に基づく許可等が必要となる。
ただし、このような行為であっても当該運送行為が自己の生業と密接不可分であり 、その業務に付帯して行われる場合は、当該運送行為が主要業務の過程に包摂しているものと認められ、貨物自動車運送事業法上の許可等を要しないこととしている。
廃棄物の運送についての現在の取扱いは、廃棄物処理業者が自ら処理施設を保有し処理まで行うものであるかどうかにより許可等の必要性の有無を判断しているところである。
照会者から提示のあった行為は 「当社請負事業で発生する産業廃棄物を元請の需要で、収集運搬費用を徴収して、有償で自社車両を用いて運搬予定である」こと、また、「中間処理施設及び最終処分施設はありません」という事実から、産業廃棄物収集運搬業の許可の有無にかかわらず 「他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する」ことに該当し、貨物自動車運送事業法に基づく許可等が必要であると判断される。
また、上記許可等を取得せず貨物自動車運送事業を営んだ場合には、貨物自動車運送事業法第3条違反により 「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又 、はこれを併科する 」と規定(貨物自動車運送事業法第71条)されているほか、自家用自動車を使用する者に対する行政処分として、自家用自動車を使用制限又は禁止(道路運送法第81条)することができることとなっている。
国土交通省の見解は、原則として運送業の許可を必要としています。ただし、次の場合には例外規定を設けています。
・当該運送行為が自己の生業と密接不可分であり 、その業務に付帯して行われる場合は、当該運送行為が主要業務の過程に包摂しているものと認められ、貨物自動車運送事業法上の許可等を要しない
・廃棄物の運送についての現在の取扱いは、廃棄物処理業者が自ら処理施設を保有し処理まで行うものであるかどうかにより許可等の必要性の有無を判断しているところである。
要するに、産業廃棄物の処分業許可を有している事業者は中間処理施設や最終処分場を所有しており、自らの施設に運搬する行為に関しては運送業の許可は不要と整理されています。
一方、環境省からこの問題について明確な通知文などは確認をすることができませんでした。(R8.3.16通知がありましたが、後の連載で取り上げます。)
4.長年放置されていた事実
以上を踏まえると、正式な環境省からの見解はないため、国土交通省の解釈上は廃棄物収集運搬業者にも運送業許可が必要となる場合があるように読み取れます。
しかしながら、その取得を義務づけるような法改正は行われていません。
結果として、環境省と国土交通省の見解は正式に統一されることなく現在に至り、白ナンバーによる運搬が事実上容認された状態が続いてきました。
私自身、産業廃棄収集運搬業の審査に携わっていた立場として、車両ナンバーの色によって許可の可否を判断したことはなく、またその必要性を疑問に思うこともありませんでした。
さらに、廃棄物処理法上、運送業許可の取得は許可要件とされていないため、ナンバーの種別を理由として不許可とすることは困難であると考えられます。
このような長期にわたる「不明確な状態」こそが、「運送業許可は不要」とする立場の根拠の一つとなっています。
仮に法的に明確に必要であるならば、強制力を伴う法改正や取締りがすでにおこなわれていたはずです。
次回は、貨物自動車運送事業法の観点から、廃棄物収集運搬業者に運送業許可を義務付けた場合に生じる実務上の不都合について検討していきます。

