廃棄物ではない有害使用済機器とは?
こんにちは。はしもと行政書士事務所の橋本です。
今回は、 有害使用済機器 についてお伝えします。
これまで、産業廃棄物の分類や一般廃棄物についてブログを書いてきましたが、
有害使用済機器とは廃棄物なのでしょうか。
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有害使用済機器とは
はじめに
そもそも有害使用済機器は、廃棄物なのかと思われる方がいると思いますが、
有害使用済機器は廃棄物ではなく、有価物です。
廃棄物処理法という名前の法律なのに、有価物を規制するのは矛盾していると法改正当時は物議を醸したものです。
規制のきっかけ
有価で取引された鉛等の有害物質を含む、使用済電気電子機器と金属スクラップ等が混合された物(いわゆる雑品スクラップ)等が、
環境保全措置が十分に講じられないまま、保管や処分されることにより、火災を含む生活環境保全上の支障が生じておりました。
そこで、雑品スクラップ(有害使用済機器)を規制するべく始まったのがこの制度です。
主な法改正内容は、以下のとおりです。
- 使用を終了し、収集された機器(廃棄物を除く。)のうち、その一部が原材料として
相当程度の価値を有し、かつ、適正でない保管又は処分が行われた場合に人の健康又
は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるものを有害使用済機器として定義 - 有害使用済機器の保管又は処分を業として行おうとする者に都道府県知事又は政令
市長への届出を義務付け - 政令で定める保管・処分に関する基準の遵守を義務付け
- 都道府県による報告徴収及び立入検査、改善命令及び措置命令の対象に追加(これら
の違反があったときは罰則の対象)
有害使用済機器の種類
「有害使用済機器」の対象は、家電リサイクル法対象4品目、小型家電リサイクル法対象28品目の計32品目です。
1 ユニット形エアコンディショナー(ウィンド形エアコンディショナー又は室内ユニットが壁掛け形若しくは床置き形であるセパレート形エアコンディショナーに限る。)
2 電気冷蔵庫及び電気冷凍庫
3 電気洗濯機及び衣類乾燥機
4 テレビジョン受信機のうち、次に掲げるもの
イ プラズマ式のもの及び液晶式のもの(電源として一次電池又は蓄電池を使用しないものに限り、建築物に組み込むことができるように設計したものを除く。)
ロ ブラウン管式のもの
5 電動ミシン
6 電気グラインダー、電気ドリルその他の電動工具
7 電子式卓上計算機その他の事務用電気機械器具
8 ヘルスメーターその他の計量用又は測定用の電気機械器具
9 電動式吸入器その他の医療用電気機械器具
10 フィルムカメラ
11 磁気ディスク装置、光ディスク装置その他の記憶用電気機械器具
12 ジャー炊飯器、電子レンジその他の台所用電気機械器具(2に掲げるものを除く。)
13 扇風機、電気除湿機その他の空調用電気機械器具(1に掲げるものを除く。)
14 電気アイロン、電気掃除機その他の衣料用又は衛生用の電気機械器具(3に掲げるものを除く。)
15 電気こたつ、電気ストーブその他の保温用電気機械器具
16 ヘアドライヤー、電気かみそりその他の理容用電気機械器具
17 電気マッサージ器
18 ランニングマシンその他の運動用電気機械器具
19 電気芝刈機その他の園芸用電気機械器具
20 蛍光灯器具その他の電気照明器具
21 電話機、ファクシミリ装置その他の有線通信機械器具
22 携帯電話端末、PHS端末その他の無線通信機械器具
23 ラジオ受信機及びテレビジョン受信機(4に掲げるものを除く。)
24 デジタルカメラ、ビデオカメラ、ディー・ブイ・ディー・レコーダーその他の映像用電気機械器具
25 デジタルオーディオプレーヤー、ステレオセットその他の電気音響機械器具
26 パーソナルコンピュータ
27 プリンターその他の印刷用電気機械器具
28 ディスプレイその他の表示用電気機械器具
29 電子書籍端末
30 電子時計及び電気時計
31 電子楽器及び電気楽器
32 ゲーム機その他の電子玩具及び電動式玩具
有害使用済機器の判断方法
条文の定義
有害使用済機器の定義は、廃棄物処理法上、以下のとおりです。
法第17条の2 使用を終了し 、収集された機器 (廃棄物を除く。)のうち、 その一部が原材料として相当程度の価値を有し、かつ、適正でない保管又は処分が行われた場合に人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるものとして政令で定めるもの
廃棄物の処理と清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)
条文にしっかり記載がありますが、有害使用済機器は廃棄物ではありません。
よって、規制の対象はあくまでも有価物です。
判断の基準
以前、ブログでも説明しました、廃棄物該当性の判断は、「総合判断説」によって行います。
取引関係において有償での売買があるなどの要素で廃棄物該当性が否定されるものが該当します。
以下のフロー図で確認していただければと思います。
(出典:有害使用済機器の保管等に関するガイドライン(第1版))
リユース品は除外
先ほど例示した有害使用済機器の中には、中古屋さんでリユースされる製品もありますが、それも規制の対象なのでしょうか。
有害使用済機器の定義は、「使用を終了し」、「その一部が原料として相当程度の価値を有し」と規定されています。
回収された機器が、回収業者などにおいて分解や部品の引き抜き等がされない場合、当該機器は有害使用済機器に該当しません。
よって、元の所有者から機器を購入した回収業者が、機器の清掃や、簡易な修理を行った上で、中古品として転売する行為については、規制の対象外となります。
有害使用済機器保管等事業者の届出
届出の内容について
有害使用済機器の保管又は処分を業として行おうとする者は、都道府県知事又は政令市長へ届出を行わなければなりません。
事業開始の10日前まで に、業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事へ届出を行うことが義務づけられています。
ただし、 届出の除外事由に該当する場合は、届出する必要はありません。
届出の除外事由
届出が除外されている事由に該当するには、以下の事業者です。
- 行政機関
- 廃棄物処理業者の内の一部の事業者
- 家電リサイクル法や小型家電リサイクル法の認定業者等の内の一部の事業者
- 有害使用済機器の保管量が少ないこと等により、人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれが少ないと考えられる者(事業場の敷地面積100m2未満)
- 雑品スクラップ業者以外の者が、業の目的以外で有害使用済機器の保管のみを一時的に行う場合
有害使用済機器に関する基準
有害使用済機器保管等事業者の基準
有害使用済機器保管等事業者は、有害使用済機器の保管・処分の基準を遵守しなければなりません。
基準 | 内容 |
囲いの設置 | みだりに人が入り込まないよう、また機器やその一部が周辺環境へ飛散・流出しないよう管理するため、囲いを設け、保管の位置を明らかにする。 また、囲いに荷重がかかるように機器が保管されている場合、当該荷重に対して構造耐力上安全なものとする。 |
掲示板の設置 | 機器の保管等の場所である旨、保管/処分の別、保管品目、管理者の氏名/名称と連絡先、最大保管高さなど、必要事項が表示された掲示板を設ける。 |
保管高さ | 屋外で容器を用いずに保管する場合、周辺環境への飛散・流出防止や火災対策の観点から、保管の状況に応じて定められた高さを超えないようにする。 |
土壌・地下水汚染防止 | 油の漏洩や汚水の発生・流出等により環境汚染のおそれがある場合は、地下浸透を防止するためのコンクリート敷設や、汚水の流出を防止するための排水溝の設置等の措置を講ずる。 |
飛散・流出に関する必要な措置 | 屋外で容器を用いずに保管し、強風時等に飛散・流出するおそれがある場合は、フェンスを設けるなど、保管等の状況に応じて必要な対策を講じる。 |
生活環境の保全 | 搬入搬出に伴う車両の走行、車両からの積卸し、積込み、選別時の重機稼働、処理施設の稼働等による騒音・振動により、生活環境保全上悪影響をおよぼさないよう必要な措置を講じる。 |
火災・延焼防止 | 保管にあたり、火災発生源の可能性のあるものの分別、保管高さを一定程度に制限する等の措置を講じる。 処分にあたり、発火のおそれのあるものや、蛍光管又は電池等の有害物質の飛散・流出のおそれがあるものを取り除く。処理設備に投入する機器の中に処理に適さないものが含まれていないことを連続的に確認することや、火災発生時の初期対応として消火器を設置する等措置を講じる。 |
公衆衛生の保全等 | 保管する機器の整理・整頓・清掃や、機器内部等に雨水が溜まらないようにする等により事業場内を衛生的に管理し、ねずみ、害虫等が発生しないようにする。 |
特定家庭用機器の処分 | エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機は、環境大臣が定める方法により処分する。(金属回収やフロン回収等の措置) |
禁止行為 | 有害使用済機器の焼却、熱分解、埋立処分、海洋投入処分は禁止。 |
(出典:有害使用済機器の保管等に関するガイドライン(第1版))
帳簿の記載と保存
有害使用済機器保管等事業者は、取扱い品目毎に、受入先、受入量、搬出先等を帳簿に記録し(1年毎に閉鎖)帳簿を5年間保存しなければなりません。
詳しい記載事項については、有害使用済機器の保管等に関するガイドラインの16ページをご確認ください。
まとめ
今回は、有害使用済機器について説明しました。
廃棄物処理法では、廃棄物だけでなく有害な有価物には規制をかけています。
有害使用済機器保管等事業者の届出でお困りの際は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせ下さい。