産業廃棄物収集運搬業・処分業における欠格要件について
こんにちは、行政書士の橋本です。
今回は、 廃棄物処理法における欠格要件 についてお伝えします。
廃棄物処理法の収集運搬業や処分業の許可を取得する際は、この欠格要件に該当すると
許可の取得ができなくなったり、すでに許可を持っている方は許可が取消されます。
それでは、欠格要件とはどういうものでしょうか。
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欠格要件とは
欠格の意味
欠格要件の説明の前に欠格の言葉の意味はなんでしょうか。
欠格とは、「必要な資格に欠けていること」という意味です。
要するに、欠格要件に該当すると、産業廃棄物収集運搬業や処分業などの許可の取得ができなくなります。
また、すでに許可を持っている方は許可をとりあげられてしまいます。
それでは、廃棄物処理法では、どのような欠格要件が定められているのでしょうか。
廃棄物処理法における欠格要件
欠格要件の条文はどうなっているか確認してみます。
産業廃棄物収集運搬業の条文では、以下のように記載があります。
(産業廃棄物処理業)
第14条第5項 都道府県知事は、第一項の許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
1 その事業の用に供する施設及び申請者の能力がその事業を的確に、かつ、継続して行うに足りるものとして環境
省令で定める基準に適合するものであること。
2 申請者が次のいずれにも該当しないこと。
イ 第七条第五項第四号イからチまでのいずれかに該当する者
ロ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第二条第六号に規定する暴力団員(以下この号において「暴
力団員」という。)又は暴力団員でなくなつた日から五年を経過しない者(以下この号において「暴力団員等」
という。)
ハ 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人がイ又はロのいずれかに該当するもの
ニ 法人でその役員又は政令で定める使用人のうちにイ又はロのいずれかに該当する者のあるもの
ホ 個人で政令で定める使用人のうちにイ又はロのいずれかに該当する者のあるもの
ヘ 暴力団員等がその事業活動を支配する者第7条第5項 市町村長は、第一項の許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)
四 申請者が次のいずれにも該当しないこと。
イ 心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者として環境省令で定めるもの
ロ 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
ハ 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者
ニ この法律、浄化槽法その他生活環境の保全を目的とする法令で政令で定めるもの若しくはこれらの法令に基づく処分若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し、又は刑法第204条、第206条、第208条、第208条の2、第222条若しくは第247条の罪若しくは暴力行為等処罰ニ関スル法律の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者
ホ〜ト ( 中略 )
チ その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
法第14条第5項において、許可をできない場合が列挙されています。
また、法第7条第5項第4号の規定が準用されています。
この2つの条文に欠格要件の種類があげられています。
それでは、欠格要件の種類をみていきましょう。
欠格要件の種類
具体的に欠格の条文を細かくみていきましょう。
心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者として環境省令で定めるもの
医師等の診断書により心身の故障により適切に業務を行えないと判断された者に関しては許可が取得できません。
この条文、以前は「成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの」という文言でした。
2019年6月に成年後見制度の一部が改正され、成年被後見人及び被保佐人の人権が尊重され、
成年被後見人等であることを理由に不当に差別されることのないよう、 現在の形に改正されています。
破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
破産手続開始の決定を受けると、資力がないため許可を取得することができません。
禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から5年を経過しない者
禁錮以上の刑とは、有期禁錮・有期懲役・無期禁錮・無期懲役・死刑です。
これらに該当すると許可を取得することができません。
廃棄物処理法等の規定に違反し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から5年を経過しない者
廃棄物処理法はもちろんのことその他環境法令の規定に違反すると許可が取得できません。
その他の環境法令とは次のものです。
・大気汚染防止法
・騒音規制法
・海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律
・水質汚濁防止法
・悪臭防止法
・振動規制法
・特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律
・ダイオキシン類対策特別措置法
・ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法
刑法第204条等の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から5年を経過しない者
欠格要件に該当する刑法上の犯罪とは次のものです。
・刑法第204条(傷害)
・刑法第206条(現場助勢)
・刑法第208条(暴行)
・刑法第208条の2(凶器準備集合及び結集)
・刑法第222条(脅迫)
・刑法第247条(背任)
暴力団による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
暴力団員の者や過去5年間に暴力団員であったものは、許可を取得できません。
営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が、上記(暴力団員に関する規定)または、廃棄物処理法第7条第5項第4号に定める要件のいずれかに該当するもの。
未成年でその法定代理人が暴力団員や悪いことをしていたら許可を取得できません。
暴力団員等がその事業活動を支配する者
事業活動を暴力団員が操っている場合も許可を取得できません。
欠格要件の該当者
これまで述べた欠格要件は、会社の誰が該当したら許可取得できなくなるのでしょうか。
それは、以下にあげる人です。
- 法人(会社自体)
- 役員(代表取締役、取締役、執行役員)
- 5%以上の株主、相談役、顧問
- 個人事業主
- 政令使用人
なので、会社の従業員が欠格要件に該当しても許可自体がなくなるということはありません。
欠格要件に該当したら
届出が必要
欠格要件に該当してしまったときには、2週間以内に欠格要件該当届を提出しなければなりません。
欠格要件該当届の提出をせずにいた場合には、6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
許可を取得しなおすには
欠格要件に該当すると許可が取得できなくなったり、許可をとりあげられます。
ただし、欠格要件の該当条文によって許可を再度取得しやすかったり、逆に取得しにくかったりします。
廃棄物処理法の取消し(不許可)条文はとても複雑なため、理解するのが難しいと思います。
当事務所では、欠格要件の該当により再度許可取得する際のサポートも可能です。
まとめ
今回は、廃棄物処理法における欠格要件について説明しました。
産業廃棄物収集運搬業の許可取消しや不許可の事例の多くは欠格要件によるものです。
産業廃棄物収集運搬業や処分業の許可申請でお困りの際は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせ下さい。