【管理会社必見】PCB廃棄物の保管と処理方法について徹底解説!
こんにちは。はしもと行政書士事務所の橋本です。
今回は、 PCB廃棄物の保管と処理方法 についてお伝えします。
PCB廃棄物は、工場などの事業場だけでなく、商業ビルや事務所なども関係があります。
それでは、PCBとはどういうもので、どのように利用されていたのでしょうか。
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PCB(ポリ塩化ビフェニル)について
PCBとは
PCBとは、ポリ塩化ビフェニル(Poly Chlorinated Biphenyl)の頭文字をとった略称で、人工的に製造された油状の化学物質です。
PCBの化学的特徴は、
- 水に溶けにくい
- 沸点が高い
- 熱で分解しにくい
- 燃えにくい
- 電気を通しやすい
- 化学的に安定
このような性質を有します。
その化学的安定性や不燃性から、電気機器の絶縁油、熱交換器の熱媒体などに利用されています。
日本では、1954年(昭和29年)に鐘淵化学工業高砂事業所等で製造が始まりました。
PCBの毒性
PCBが注目されることとなった有名な事件をご存知でしょうか。
1968年(昭和43年)に起こった、カネミ油症事件です。
この事件は、カネミ倉庫という会社が製造する食用油(こめ油・ライスオイル)の製造過程で、脱臭のために熱媒体として使用していたPCBが、配管から漏れて食用油に混入し、PCBが加熱されて変異し、ダイオキシンに変化しました。
そのダイオキシンの混入した食用油を摂取した人々に、顔面などへの色素沈着や肌の異常、頭痛、手足の痺れを引き起こした事件です。
PCBの製造及び使用の中止
カネミ油症事件をきっかけに1972年(昭和47年)の生産・使用の中止等の行政指導を経て、1975年(昭和50年)に製造および輸入が原則禁止されました。
PCB使用機器とPCB廃棄物とは
PCB使用機器
PCBが使用された代表的な電気機器等には、変圧器やコンデンサー、安定器があります。
そのほか、複写紙やノンカーボン紙、建築物の外壁塗材や自動車の部品の一部にまで使われています。
PCBが含まれている変圧器やコンデンサーは、古い工場やビル等で使用されており、安定器は古い工場や学校等の蛍光灯等に使用されていました。
なお、工場や学校などの施設に使用されていた蛍光灯が対象で、一般家庭の蛍光灯にPCBを使用したものはありません。
(出典:環境省サイト)
PCB廃棄物
カネミ油症事件をきっかけにPCBの製造・使用は中止になりましたが、以前に作られた変圧器やコンデンサー、安定器などのPCBを用いた機器が
老朽化により廃棄物となり、PCB廃棄物の処理が問題となりました。
特に、蛍光灯安定器のコンデンサからPCBを含む絶縁油が漏れる事故が相次ぎ、社会問題となりました。
PCB廃棄物等の保管の長期化により、紛失や漏洩による環境汚染の進行が懸念されたことから、それらの確実かつ適正な処理を推進するため、
平成13年6月22日に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(PCB 特措法)が公布され、同年7月15日から施行されました。
PCB廃棄物の分類
PCB廃棄物は、廃棄物処理法上、特別管理産業廃棄物となっています。
また、廃棄物に含まれるPCBの含有量に応じて、
高濃度PCB廃棄物 か 低濃度PCB廃棄物 に分類されます。
高濃度か低濃度かそもそもPCBが入っていない機器なのかの確認は、まずは機器の銘板によって行います。
取り付けられた銘板とメーカー名を確認し、メーカーのホームページにて確認ができます。
(出典:環境省)
次に、銘板がない場合、機器の製造年度等によって判別できます。
【変圧器、コンデンサー】
昭和28年から昭和47年に国内で製造された変圧器・コンデンサーには絶縁油にPCB使用の可能性あり
【安定器】
昭和32年1月から昭和47年8月までに国内で製造された照明器具の安定器には、PCB使用の可能性あり
(環境省は、昭和52年3月以前に建築・改修された建物は全て確認するよう案内している。)
最後に、銘板がない場合は以下の図のとおり確認をします。
【変圧器、コンデンサーの場合】
(出典:環境省)
【安定器の場合】
(出典:環境省)
PCB確認時の注意点
先ほど説明しましたPCB含有の確認のほかに、実際機器から油を取り出してPCB含有の有無を確認する方法がありますが、これにはいくつか注意点があります。
- 変圧器は油の取り出し口があるので分析可能
- コンデンサーは油の取り出し部がなく、下手に分解すると油が漏れて廃棄物を増やす可能性あり
- 安定器もコンデンサー同様、基本的に分解不可のため、下手に分解すると廃棄物を増やす可能性あり
機器によって、分解できないものがあるので、判別が困難な場合は、高濃度とみなして処分することもあります。
PCB廃棄物の保管方法
保管基準
PCB廃棄物は、特別管理産業廃棄物の保管基準を満たす必要があります。
保管基準は主に、以下の項目です。
- 保管場所の周辺に囲いが設けられていること
- 見やすい箇所に特別管理産業廃棄物の保管場所である旨などを表示した掲示板が設けられていること
- PCB廃棄物の飛散・流出・地下浸透・悪臭発生の防止のための措置が講じられていること
- 保管場所にネズミが生息し、及び蚊、はえその他の害虫が発生しないようにすること
- PCB廃棄物に他の物が混入する恐れのないように仕切りを設ける等必要な措置が講じられていること
- PCBの揮発防止及びPCB廃棄物が高温にさらされないために必要な措置が講じられていること
- PCB廃棄物の腐食の防止のために必要な措置が講じられていること
図にすると以下のようなイメージです。
(出典:東京都環境局)
保管する場合は届出が必要
PCB使用製品の使用を中止し、廃棄物となった場合、保管する場所を管轄する
都道府県もしくは政令市に届出が必要となります。
届出は、毎年1回6月末までに行い、処分を終了するまで提出する必要があります。
PCB廃棄物の処分方法
高濃度PCB廃棄物の処分方法
高濃度PCB廃棄物は、国が作った施設で計画的に処理されていました。
地元との同意のもと作った施設は、期限付きの計画で処理を行っており、
現在では、その施設の全てが処理期限を迎え、処理をすることができなくなっています。
高濃度PCB廃棄物の今後の処理をどうするのか、環境省で議論がされているところです。
とりあえず、高濃度PCB廃棄物が発見された場合は、管轄自治体に問い合わせ、その指示にしたがいましょう。
低濃度PCB廃棄物の処分方法
一方、低濃度PCB廃棄物については、民間の許可業者が処理をしており、
その処理期限は、令和9年3月末までです。
低濃度PCB廃棄物の処分業者は、こちらから確認できます。
まとめ
今回は、PCB廃棄物の保管と処分方法について説明しました。
特に、安定器は昭和52年3月までに建築・改修された建物を解体する際は十分に注意が必要です。
PCB特措法の手続きやPCB廃棄物の処分でお困りの際は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせ下さい。