グリストラップ汚泥が資源に変わる日―環境省実証事業の最前線

産業廃棄物の中で年間排出量が最も多いのが「汚泥」です。その汚泥のうち、飲食店や食品工場などから排出される「グリストラップ汚泥」が、航空燃料として生まれ変わる技術の研究が紹介されていましたので解説します。

㈱サニックスホールディングスおよび㈱サニックス資源開発グループが進める「グリストラップ汚泥からジェット燃料の原料製造事業」が、この度、環境省の「令和7年度脱炭素型循環経済システム構築促進事業のうち、プラスチック等資源循環システム構築実証事業(うち、廃棄物等バイオマスを用いた省CO₂型ジェット燃料等原料製造・社会実装化実証事業)」に採択されました。 同事業は、サニックスグループの既製品である「再生油Bio」から良質な油を分離、精製し、持続可能な航空燃料(SAF)の原料を生産することを目的にしています。
【出典】2025年11月7日 PRTIMES 「グリストラップ汚泥からジェット燃料の原料製造事業」が、環境省の「廃棄物等バイオマスを用いた省CO₂型ジェット燃料等又はジェット燃料等原料製造・社会実装化実証事業」に採択

記事にある「プラスチック等資源循環システム構築実証事業」とは、環境省が、化石資源由来プラスチックを代替するバイオプラスチックへの転換や、リサイクルが難しいプラスチックのリサイクル技術開発など、資源循環システムの構築と、それによるCO2排出抑制を目指す実証事業です。この事業は、技術的課題を解決し、実用化・社会実装につなげることを目的としています。

出典:一般財団法人新エネルギー財団

まず、「再生油Bio」とは、グリストラップ汚泥を遠心分離などによって油分を取り出し、再生・製品化した重油代替燃料の製品名です。飲食店等から排出されるグリストラップ汚泥には、常温で固まる廃食油が多く含まれていますが、これらは水分や汚泥、混入物を大量に取り込んでいるため、通常の廃食用油と比べて油分の分離が困難です。
この分離技術を確立したサニックスグループ(以下「サニックス社」)は、まさに時代のニーズを捉えた処理業者といえます。

今回、サニックス社が実証事業に採択されたのは、「再生Bio」からさらに良質な油を分離・精製し、持続可能な航空燃料(SAF)の原料を生産することを目的としているためです。
また、SAF以外の残留物も液体燃料や固形燃料へ転換し、それぞれ重油や石炭の代替品として再利用する計画が示されています。

グリストラップ汚泥から再生油を製造できること自体が革新的ですが、さらにその再生油からSAFを製造する技術が確立されれば、CO₂排出削減のみならず、未利用廃棄物の高度利用にもつながります。
SAFについては、環境省が予算を確保し、経済産業省も投資対象とするなど、国全体で推進している取り組みであるため、今後も注目が高まるでしょう。

出典:再資源化事業等高度化法説明資料より

国の動向などを踏まえ、新たな処理技術の確立や、これまでにない廃棄物の処理を積極的に進める事業者こそ、排出事業者に選ばれる存在になっていくと感じます。